「本をつくりたい」と思ったとき、その目的が売り上げアップや自己のステップアップにあるならば、出版ブランディング戦略を立案するべきです。
出版ブランディング戦略を以下のように定義します。
「単に本を出すだけではなく、出版のためにコンテンツを制作する過程で生み出されるすべての成果物を生かしながら、本の出版をきっかけ=起点に、自分のサービスや技芸、事業を広く知れ渡る形に変化させること」
さて、個人ブランディングにおける出版の位置付けについて、まずお話しましょう。
いまの時代、「本を出すこと」にどんな意味があるのでしょうか。
かつては「本を出すこと」は社会的なステータスでした。
作家、学者、教授など、教養が高く社会的にも認められた人が、出版社から依頼を受けて執筆していました。
そして現代。
ビジネス書と呼ばれるものも一般化しましたし、自費出版やオンデマンド出版の仕組みも整ってきました。
ブログで原稿を書き溜めファンをつくり、クラウドファンディング で収益化する、というケースも出てきています。
出版社名にこだわらなければ、本を出すことはそれほど難しいことではありません。
あなたにすこし知名度があれば、どこかしらの業者から声がかかるでしょう。
さて、本を出したいと考えたとき、そこにはどんな気持ちがあるのでしょうか。
あなたが「本を出したい」と考えるとき、そこにあるのは1冊の本を完成させて満足するような感情ではないかもしれません。
本ができたら終わり、ではなく、本を作る過程で生まれる可能性、出会い、そして本を出したあとにおこるであろう未来。「本を出したい」という思いの先には、こうした夢を見ているのではないでしょうか。
いわば、本づくりは一つの通過点であり、その先にもっと欲しいものがある。
現代においては、知識やノウハウを印刷物にして広く頒布(はんぷ)させることの役割はやや減少しました。
その代わりに発達したのは、オンラインでその人の価値観や技術を見えるかたちにし、つながりを強調するやりかたです。
ツイッターを中心としたSNSは、コンテンツとアカウント間の連携をまざまざとみせつけています。
近年では、1冊の強い本を書けるよりも、数多くのアカウントとつながり、”グルーブ”を生み出すほうが価値が高いとされている面もあります。
また、同業者やプロがうなるほどの技術があっても、オンラインでのプレゼンスがなければ価値が認められないときもあります。
テレビやネットニュースなどのメディアも、その質よりもフォロワーや話題性を先行させて取材依頼を送っているときがあります。
「本当にすごい人」ではなく「話題がある人」の価値基準が高まっているというわけです。
「ネット上での有名人」が、そのまま「有名人」になりつつあります。
もしあなたが、
これから自分の事業を成長させたり、
自分の活動をより多くの人に知ってもらうためには、
こうしたプレゼンス=存在感を獲得していくすべを身につけることが近道になるのかもしれません。
もし、こうしたネット上でのプレゼンスを高めることができれば、少しずつでも自分のコンテンツを蓄積し、あるきっかけを経て知名度とフォロワーを獲得できる。
もし自分の活動や技術に自信があるのであれば、そこに強い援護を受けることができるのです。
さて、ネット上で有名になり、それがリアル世界での知名度に転嫁し、いつしか「売れる」状態になる。この流れをつくることができれば、あなたの大きな夢に近づくことができるでしょう。
ここでもう一度本を出す意味を考えてみると、
・ネット上で自分のプレゼンスを高めていくための基準点となる
・自分の思想やノウハウを体系的に整理し、常に出せる状態にしておく
・特定の物事に対して自分なりに意見や分析ができるその根底をつくっておく
こうした条件を満たすとき、本を出すことは単なる出版活動ではなく、その後の個人活動すべての転機になるといえます。
本をつくることで、オンラインで活動していくための土壌をつくる。ベースをつくる。
出版がブランディングという言葉とともに語られるようになって久しいですが、
今の時代にあった個人の本をつくる1つの理由が、こうしたオンライン上でのあらゆる活動の起点となることです。
基本的な進め方としては次のようなかたちをたどります。
出版を「転機」とするため、Before/Afterという意味合いが強くなります。
【始動期】
・テーマ決め
・ブログ開設
・執筆や発信活動の継続
【戦略期】
・蓄積されたコンテンツの整理
・自らを表すキーワード決め
・競合調査とマーケット調査を
・勝負するジャンル確定
【出版期】
・本の企画書を用意する
・本の制作体制を敷く
・本のプロジェクト決定から、制作そのものをコンテンツ化する
・本を完成させる
【水平展開】
・本の内容をもとに個人ウェブサイトを拡充させる
・本の内容を切りだしてツイッターやインスタグラムに転用する
【世に出る交流期】
・自らのコンテンツを立脚点としながら、世の中のさまざまなトピックを扱う(フローコンテンツ期)
・他のアカウントとの交流を活性化させ、それを強調する
【成就】
・オファーに対応する
・アカウント同士の交流をおこない、それを間接的にコンテンツ化する(対談など)
・マーケティングオートメーションツールをつくる
ブランディングにおいては、この「オファー」までいくのが真のゴールです。それも、一回のオファーではなく、継続的にオファーがくることが必要です。オファーとはウェブメディアの取材、雑誌の取材、テレビの取材、講演会の依頼、パネルディスカッションの依頼など、「あなたに出て欲しい」と指名があるものを指します。
一定の実績がたまれば、PRの専門家を雇うことでさらに著名なメディアへの出稿を実現することも可能です。
本をきっかけに有名になる、そのステップがおおまかにイメージできたでしょうか。
この行程を考えると、単に本を出せばよいわけではなく、その後のオファーにつながる本の書き方、扱い方をしなければいけないことがわかります。
本講座では、以上の流れを詳細に解説しながら、どの時点でどのようなアクションをとればよいのかを提示します。
本を出すのが目的ではなくあくまで手段という人向けの、中級・上級向けセミナーです。